流砂
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- ¥2,600
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発行者による作品情報
これが私の生きる条件を変えた十日間の真実である。流砂は地獄への穴だが、私はなんとかそれに嵌らなくて済んだ。――がんの告知を受けた北欧ミステリの帝王マンケルは何を思い、押し寄せる絶望といかに闘ったのか。遙かな昔に人類が生まれてから今日まで、我々は何を受け継ぎ、そして遠い未来の人々に何を残すのか。〈刑事ヴァランダー・シリーズ〉の著者の最後の作品。闘病記であり、遺言でもある、魂の一冊。
APPLE BOOKSのレビュー
「刑事ヴァランダー」シリーズで知られ日本のファンも多いヘニング・マンケルは、推理小説や児童文学を手掛けたスウェーデンの人気作家。晩年、肺がんを発症し、2015年に67歳の生涯を閉じた。本書は、がんの告知を受けてからわずか6か月の間に綴った渾身のエッセイ。病を宣告されたときのことをはじめ、闘病する日々の中で感じた命や人生、そして誰にとっても招かれざる客である死についての想いを書き残している。自分ががんであると知ったときの恐怖や絶望感を、彼が子どもの頃に読んだという、人を飲み込み窒息させてしまう流砂という架空の存在になぞらえ、それは意志とは関係なく引きずり込まれてしまう恐ろしいものだと語る。しかし、そこから抜け出したマンケルは、高校を辞めて滞在したパリでの暮らしや、モザンビークで出会ったストリートチルドレンの兄弟のこと、憧れの果てに訪ねたマルタ島のハルガーキム宮殿への想いなどを端緒に、生と死を飾らない言葉で刻んでいく。病と闘いながらも、ときに冷静な筆致で、ときに熱く、人生の喜びとは何かを探ろうとする、その生きる力の強さに敬服する。