宝石鳥
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- ¥1,900
発行者による作品情報
神の遣いである宝石鳥の子孫が治めるシリーシャ島。島を訪れた植物学者と恋に落ちた女王は、その身を二つに分け、半身を島に残し、自らは恋人と海を渡った。だが身を二つに分けるなど所詮無理なこと、女王は一枚の肖像画を遺して消えてしまう。そして百年後、島では新たな女王即位の儀式が迫っていた……。不思議な力を持つ仮面の女、女王の魂を引き継ぐ儀式、喪われた半身。第2回創元ファンタジイ新人賞受賞、死と再生の傑作ファンタジイ。/第2回創元ファンタジイ新人賞選考経過、選評=井辻朱美、乾石智子、三村美衣
APPLE BOOKSのレビュー
"シリーシャ"という島に伝わる"宝石鳥伝説"を軸に、100年の時を超えて2つの時代が交錯するファンタジー作品「宝石鳥」。ほとばしるイマジネーションと壮大なスケールで第2回創元ファンタジイ新人賞を受賞した、鴇澤亜妃子のデビュー作。伝承の世界と現代を行き来しながら、死と再生、愛の喪失感、芸術や学術への向き合い方といった哲学的なテーマを通じて、登場人物たちがつながっていく。それぞれのエピソードに寄り添う情景描写が見事で、絵画を思わせる色鮮やかさで読者を引き込む。一方で島の神事のシーンなど、徹底的に作り込まれた設定は真に迫る。その臨場感に圧倒されると共に、民俗学的な知的好奇心もくすぐられる。謎めく肖像画のモデルを求め続ける画家、妻を亡くした音楽家など、それぞれのキャラクターの幻想的なムードに満ちた物語は悲しくも美しい。彼らの行く末を追いかけるうちに、時を忘れて読み耽ってしまう。