遭難信号
-
- ¥1,500
-
- ¥1,500
発行者による作品情報
アイルランドの小さな町で、ハリウッドを夢見て脚本を書き続けてきたアダム。恋人のサラが仕事でバルセロナに出張し、まったく連絡がとれなくなってしまう。だが出発から数日後、アパートにサラのパスポートが郵送されてくる。それには「ごめんなさい――S」とサラの字で書かれた付箋が貼ってあったが、封筒の文字は別人のものだった。彼女に何があったのか? アダムは恋人を追い、手がかりをもとに地中海クルーズ船に乗り込む。千以上もの客室を持つ豪華客船で暴かれる、予想外の真実。巧みな構成力と謎解きの妙味を味わえる衝撃のサスペンス!/解説=穂井田直美
APPLE BOOKSのレビュー
デビュー作にして、英国推理作家協会が選出するCWA賞の新人賞で最終候補に残ったキャサリン・ライアン・ハワードによる長編ミステリー小説「遭難信号」。豪華客船セレブレイト号乗船後に失踪した恋人サラの行方を探す、主人公アダム。手掛かりを追って、アイルランド、バルセロナ、パリなどで国境を超えた捜索劇がダイナミックに展開していく。アダムのほか、船内で働く女性コリーン、フランスのピカルディに住む少年ロマンと、一見何の関係もない3人の視点でそれぞれの話が進行。次第に3つのストーリーが交錯し、意外な関わりが見えてくる巧みな構成に引き込まれる。また、通常の法律が通用しない海上という特殊な状況や、閉鎖された空間で繰り広げられる謎解きも魅力。豪華客船が舞台ではあるが、クルーから見た船上での生活の描写も興味深い。著者は、旅行関係やホテルなどヨーロッパでさまざまな仕事を経た後に作家としてデビューしたという経歴の持ち主。各地で見聞を深める中で培われた観察眼や取材力が作中で光る。テンポよく次々と予想を覆していく、正統派ミステリーの醍醐味を存分に楽しめる。