ヨーゼフ・メンゲレの逃亡
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- ¥1,900
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発行者による作品情報
ヨーゼフ・メンゲレ、アウシュヴィッツ絶滅収容所に移送され、降車場に降ろされたユダヤ人を、強制労働へ、ガス室へと選別したナチスの医師。優生学に取り憑かれた彼は、とりわけ双子の研究に熱中し、想像を絶する実験を重ねた。1945年のアウシュヴィッツ解放時に研究資料を持って逃亡。その後、49年にアルゼンチンに渡った彼は、79年にブラジルの海岸で死亡するまで南米に潜み、捕まることも、裁かれることもなく様々な偽名のもと、生き続けたのだった。そして、その死が遺骨のDNA鑑定によって確認されたのは90年代になってからのことだ。なぜメンゲレは生き延びることができたのか? 彼は、どのような逃亡生活を送ったのか? 謎に満ちた後半生の真実と、人間の本質に、ジャーナリスティックな手法と硬質な筆致で迫った傑作小説。ルノードー賞受賞作。
APPLE BOOKSのレビュー
ジャーナリストでもあるフランス人作家、オリヴィエ・ゲーズの「ヨーゼフ・メンゲレの逃亡」。第2次世界大戦中、ヒトラー支配下のアウシュビッツ収容所で多くのユダヤ人の残虐な死に関わった医師ヨーゼフ・メンゲレの戦後の逃亡劇を描いた、小説仕立てのノンフィクション。戦争犯罪人として追われながらも、なぜ彼が79歳で死亡するまで逃げおおせることができたのかが冷静な筆致でつづられている。メンゲレを保護した人々の事情や思い、そして彼が逃亡していた30年間における追っ手の変化は、世界情勢をつぶさに映しているようで興味深い。本作ではメンゲレの逃亡生活中の慢心や動揺、苦悩など心の中を探りつつ、その自己中心的な姿を浮き彫りにしている。これは多くの資料に当たり、メンゲレの出身地であるドイツ南部の町ギュンツブルクや逃亡先のアルゼンチンやブラジルへも足を運んだという著者の旺盛な取材力によるところが大きい。事実性を踏まえながら小説という形態を取ることで、一人の人間としての実像をあぶり出すことに成功した意欲作。