スーベニア
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3.3 • 3件の評価
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- ¥1,600
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発行者による作品情報
文雄と過ごすキラキラした時間は、いつか歳をとった自分自身への贈り物になる……。
2010年、東京。34歳独身で、雑誌を中心に活躍するフリーカメラマンの安藤シオは、3年前に飲み屋で知り合って以来たまに泊まりに来る41歳の映像カメラマン、文雄に思いを寄せている。
自分の私生活を語りたがらず、マメに連絡をくれない文雄との「恋人」とは呼べない曖昧な関係にモヤモヤしていたシオは、美大時代の男友達でイラストレーターの点ちゃんと偶然出版社で再会。周囲には秘密にしていた文雄とのことを話した帰り道、妻子のいる点ちゃんに不意打ちのキスをされる。
2011年3月11日、東日本大震災が発生。真っ先にメールをくれたのは、シオが連絡を待っていた文雄からでも、点ちゃんからでもなく、いやな別れ方をした元カレの角田だった。シオの心は揺れ動く……。
両親や友だちの目を気にして生きてきたシオが選んだ答えとは?
「大人になれないわたしたちを描きたかった」という著者による、せつなくてリアルな初の長編恋愛小説。
APPLE BOOKSのレビュー
マンガ家、イラストレーター、小説家などさまざまな肩書きを持ちながら、カルチャーを発信し続けているしまおまほの初長編恋愛小説『スーベニア』。主人公の安藤シオは34歳独身のフリーカメラマン。彼女が思いを寄せながら曖昧な関係が続いている7歳年上の映像カメラマンの文雄、妻子がいながらシオと関係を持った美大時代の男友達の点ちゃん、そして元彼の角田。3人の男たちの間で揺れ動きながら、自分がどうしたら幸せを感じるのか分からずもやもやしていたある日、東日本大震災が起こる。そこで見えた彼らとの本当の関係、そしてシオに訪れた大きな変化は何だったのか。些細な会話や丁寧に描かれた日常の行間から、彼ら3人の個性が浮き立ち、仕事、恋愛、そして人間関係に悩む30代半ばの女性の焦りや後ろめたさがにじみ出す。自分は他の人とは違う人生を送っている気がしていたのに、実は凡庸な恋愛に翻弄されていたと気づいた時のむなしさ。現実に打ちひしがれながらも、人生は続いていく。誰かのありふれた日常に落ちているような、苦くて切ないリアルな物語。