



汚れた手をそこで拭かない
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3.6 • 19件の評価
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- ¥1,500
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発行者による作品情報
平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。
元不倫相手を見返したい料理研究家……始まりは、ささやかな秘密。
気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、
見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。
取り扱い注意!研ぎ澄まされたミステリ5篇からなる、傑作独立短編集。
APPLE BOOKSのレビュー
『許されようとは思いません』で高い評価を得た芦沢央が、何気ない日常に潜んだ、思わぬ落とし穴を描くミステリー短編集。日本推理作家協会賞の短編候補作2編を含む5編を収録。モンスタークレーマーの老人が脚立から落ちた事故死の真相を、若い頃工務店に勤めていた夫に代わって妻が解き明かす「ただ、運が悪かっただけ」、プールの排水バルブを閉め忘れた小学校教師が水道代におののきながら自分のミスを隠そうと画策する「埋め合わせ」、アパートの隣人が熱中症で死んだのは、誤配された電気代の未払い請求書を認知症の妻が渡しそびれたからではないかとおびえる「忘却」、主演俳優のスキャンダルで撮影した映画の公開が見送られる事態を避けようと監督が奔走する「お蔵入り」、かつての不倫相手と再会した人気料理研究家の女性が抱いた優越感が仇(あだ)となる「ミモザ」。いずれもふとしたことから平穏な日常が壊れ、暗転していく様子をサスペンスフルに描いて読者を翻弄する。そればかりか、周到に伏線を張りながら読み手の盲点を突く仕掛けがあり、ミステリーとしての技巧も見事。全編ともにお金の問題を扱いつつ、何ともいえない後味の悪い結末を用意した最上級のイヤミス集。