豚の報い
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- ¥600
発行者による作品情報
生命力あふれ、ひたむきでどこかユーモラスな三人の女性の、沖縄式生き方のすごさ!選考委員の圧倒的支持を得た芥川賞受賞作!
突如スナックに闖入してきた豚の厄を払うため正吉と三人の女は島に向かった。芥川賞受賞の表題作と「背中の夾竹桃」を収録する。
解説:崔洋一
APPLE BOOKSのレビュー
第114回(1995年下半期)芥川賞受賞作。生まれ育った沖縄県浦添村(現浦添市)の市役所に勤務しながら、1975年に作家デビューした又吉栄喜。コツコツと書き続けること20年にして『豚の報い』で芥川賞を受賞した彼は、一貫して琉球や沖縄の歴史や独自の習俗を背景に、人々の営みと生命力を描く。本作には、沖縄の若者でも縁遠くなっている魂(マブイ)、御獄(うたき)、ユタムニー(霊能者の言葉)、風葬といった、土着の精神世界や風土が取り上げられ、旅心と好奇心をくすぐられる。夜のスナックに1匹の豚が乱入し、襲われたスタッフの一人、和歌子が魂を落とした。常連客の正吉が魂を込めたおかげでとりあえずは元に戻るが、豚に襲われるのも、魂を落とすのも悪いことが起こる予兆。そう考えたスナックの女性3人は正吉をガイドにして、厄落としのために神が住む島へと向かう。ところが島では女性たちに次々と異変が起き、正吉はトラブル処理に走り回るはめに。生と死が濃厚に漂うのだが、あっけらかんとよくしゃべる女性たちが空気を軽くしていてフッと笑わせる。沖縄のスナックをのぞいてみたくなる不思議な一作。