トゥモロー・ネヴァー・ノウズ
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3.0 • 2件の評価
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- ¥1,900
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発行者による作品情報
「私」は娘を凌辱して殺害した、犯人の男を許すことができなかった。少年法の庇護対象内の年齢であったために、極刑にもならず、いまものうのうと生きている……あの男。私は人生を棒に振っても良かった。娘のいない人生など耐えられない、意味がない。だから、男の部屋に包丁を持って飛び込み、めった刺しにして……。気がつくと「私」は、復讐を決意した最初の瞬間にまでループしていた。何度殺しても、何度も殺しても、「私」の時計は先へ進まない……どうして。復讐者が、高校生が、世界王者が、全人類が「今日」という一日をループする。これは、SF的な日常を送ることを宿命づけられた、私たちの未来の物語。
APPLE BOOKSのレビュー
タイムループが人類に拡散していく世界を描いたSF連作短編集『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』。2022年8月に小説投稿サイトで発表され、斬新な設定が話題となり翌年4月に書き下ろしを含めて書籍化された。著者の宮野優はこれが書籍デビュー作となるが、人物、場所、時間を変えて世界がループに感染する風景描写と、叙述トリックでミスリードを誘うテクニックは新人離れした面白さだ。ループ現象の始まりは、第1話の「インフェルノ」。最愛の娘を残忍に殺された“私”が、包丁を携えて犯人の入院先に忍び込む。その後、女子高生、格闘技の世界王者、ジャーナリスト、読書好きの女性と主人公が変わるにつれて、ループの広がりは加速し、明日が来ない現実は社会を荒廃させていく。今日の記憶だけが積み上がる世界で、人々は何を糧に生き続けるのか。ループ小説を絶望と希望の群像劇として作り変えた画期的な一作。