雀ちょっちょ
-
- ¥2,200
-
- ¥2,200
発行者による作品情報
天才・大田南畝はなぜ筆を折ったのか?
守るべきは、文化か、家族か。
『まいまいつぶろ』『またうど』の著者がおくる、心震える江戸の家族小説!
平賀源内から高い評価を受けたことを皮切りに、
文人としての名声をほしいままにしていた大田南畝。
蔦屋重三郎とも交流を重ね江戸の狂歌を牽引する存在になるが、
田沼意次の失脚と松平定信の台頭により、出版界に粛清の嵐が吹き荒れる。
一方、長男・定吉には、大田の家に時としてあらわれる「魔」の萌芽が見え――。
狂歌への思いと家族愛。
天才・大田南畝の知られざる葛藤を描き切る傑作長編!
APPLE BOOKSのレビュー
江戸のユーモアと知性を体現した文人武士の大田南畝は、なぜ筆を折らなければならなかったのか。『まいまいつぶろ』の村木嵐が丁寧な筆致で家族愛を描く、感涙の歴史小説。和歌の形式に滑稽味や風刺を込めた「狂歌」の第一人者として人気を博していた直次郎(大田南畝)。しかし田沼意次の失脚と松平定信の台頭により、世の中は一気に引き締めムードへと傾き、江戸の市井にもその影響が広がった。幕府による出版統制を受け、直次郎はある決断をするのだが…。「詩魔」に魅入られた男の、静かな葛藤と家族への思いが胸を打つ。蔦屋重三郎、平賀源内、上田秋成ら文人との交流や、直次郎の目を通した写楽、京伝、馬琴への鋭い人物評も興味深い。狂歌の世界は日常の肩書を脱ぎ捨て、「狂名」というハンドルネームを名乗る者たちが機知を競う場だった。いわば現代のSNSやミームにも通じる、庶民のためのフラットなコミュニティだったのだろう。そんなモダンで闊達(かったつ)な空気が、数百年前の日本ですでに成立していたと思うと痛快だ。 一方で著者は、名前を伏せて詠まれる歌が卑しく嫌らしい毒を持つようになるといった、匿名の言葉が抱える危険性も忘れていない。リアルな時代の空気を言葉に吹き込もうとした男たちの静かな覚悟を、ぜひ見届けてほしい。