武田義信転記 第四巻
道を握る者
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発行者による作品情報
道は、奪った者のものになる。
政変は成った。義信の手に、武田の路が移った。だが、奪ったからといって動くわけではない。道は、仕組みで動く。荷を通す者がいて、宿が機能して、関が整って、初めて道になる。木曽が最初に試してきたのは、そこだった。
荷を遅らせる。関で止める。銭を求める。だが臣従はすると言う。
義信には分かった。木曽は戦いたいのではない。値を吊り上げたいのだ。そして、道を握る者は値を知っている。だからこそ、今のうちに折らなければならなかった。
道に半分はない。
焼かず、残す。だが取る。それが義信の戦い方だった。宿を建て直し、関番に役を残し、敵の家に扶持を出す。兵には理解できない。なぜ勝った側が焼け跡を片付けるのか。だが義信は知っていた。怒りで動かした道は、怒りが冷めれば止まる。道は筋と得で動かさなければ、次の荷が来ない。
木曽路を取った先に、美濃がある。土岐の名が越前に眠っている。遠江では徳川が動き出している。すべてが同時に、すべてが足りないまま動いている。
そして掛川が囲まれた。
今川からの使者が来る。助けてくれと言う。義信は即答しなかった。軽い約束で兵は増えない。米も湧かない。道も広がらない。出るなら、出られる形で出る。そのためにまず、高天神を見る。
高天神が転じた。
遠江の線が切れた。今川は言葉を失いかけている。文が出ない時は、文を作る場所が詰まっている。義信は地図を見た。天竜川以西は、もう戻らない。ならば、残るものを守るための線を引くしかない。
失ったものを数えるな。残るものを守れ。
だが、今川にそれを飲ませるのは刃を突きつけることだった。そしてその刃を、義信より先に読んだ者がいた。
駿府に、まだ寿桂尼がいた。
武田義信・徳川家康・今川氏真・寿桂尼が交差する戦国時代を舞台にした長編歴史転生小説『武田義信転記』第四巻。武田義信、道を握る編。