リテイク・シックスティー‪ン‬

あの夏の日

日本海側の地方都市に住む高校一年生の青春を描いたストーリー。高校一年生の小峰沙織と、沙織の友人で11年後の未来から人生をリセットしようとやってきた貫井孝子が主人公。孝子は1990年代後半の就職氷河期に大学を卒業し、安定した職業に就くこともできず未来の展望の見えない時代を悶々と過ごした悔恨がある。作者の実像が少し「孝子」に投影されているようにも感じる。一方、小峰沙織は、チャーミングでしかもグラビアアイドルなみの姿態・・・、作者の故郷が秋田県であることから勝手に想像をたくましくして、女優の佐々木希にイメージを重ねてみた。筆者のように、中高一貫の男子校で青春を過ごした経験からは、人生をどの時点からリセットしたいかと問われたら、一浪して大学に入学した時点から、と即答するであろう。仮に人生をリセットできるにしても、未来の自分を変えることはできないのかもしれない。どんな境遇にあっても、リアルタイムで「私は今の私で、幸せなんだ」と気づくまでの紆余曲折が人生の醍醐味なのかもしれない。