Nの逸脱
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4.0 • 1件の評価
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- ¥1,700
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発行者による作品情報
【2025年第173回直木賞候補作!!】
爬虫類のペットショップでアルバイトをする金本篤は、売れ残ったフトアゴヒゲトカゲが処分されそうになるのを見て、店長に譲ってくれと頼む。だが、提示された金額はあまりに高額で、「ある男」を強請って金を得ようと一計を案じるが……。自ら仕掛けた罠が思いがけぬ結末を呼び込む「場違いな客」など、町の「隣人」たちが日常の奈落で繰りひろげる3つの物語。
APPLE BOOKSのレビュー
デビュー作『二木先生』が15万部超のヒットとなった夏木志朋の注目の第2作は、一つの町を舞台に隣人の謎や恐怖をテーマにしてみたい、という着想から、ミステリアスに逸脱する日常を3つの物語で描いた短編集。各話の登場人物たちがうっすらと交錯する目配せに思わず「そうつながるのか!」と膝を打つだろう。「場違いな客」は、爬虫(はちゅう)類ショップのアルバイトがUVライトを購入した男性にある疑念を抱くことから、想像の斜め上を行く展開に。「スタンドプレイ」は高校の数学教師が最終電車で遭遇した迷惑な女性を追いかけるうちに、ある人物と誤解されるシニカルなストーリー。「占い師B」は優れた人間観察眼を持ち、売れっ子の占い師になった坂東イリスと、突然押しかけてきた本物の霊能者、秋津とのドタバタした日々を描き、笑わせる。貧困、差別、嫉妬といったテーマが作品の根底に流れているが、よどんだ空気やグロテスクな描写で引き込むわけではない。むしろ、さらりとユーモラスに表現するからこそ、負の感情が際立つ。侮り難いエンターテインメント作だ。第173回直木賞候補作。