NHK「100分de名著」ブックス ブッダ 真理のことば
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発行者による作品情報
老いや病い、死の苦しみから、人は目を背けることができない。かくも絶対的な苦悩を宿命づけられている私たちが、それでも安らかに生きるにはどうすれば良いか。仏教の始祖ブッダは、世界は原因と結果の因果則でしか動いていないことを悟り、苦しみを正しく受け入れることができるように「自分の心の在りよう」を変えていくことが、苦悩から解放される唯一の道だと説いた。現代における“処方箋”として、「釈迦の仏教」の本質を読む。
カスタマーレビュー
二千五百年の時を経て現代に甦った釈迦の教え
釈迦は「この世は原因と結果の因果則によって粛々と動いているだけであって、不可思議な力を持った救済者などどこにもいない」、「自分の救済者は自分自身である。他の誰が救ってくれようか。自分を正しく制御してはじめて、人は得難い救済者を手に入れるのだ」と悟った。現代に生きる者にとっては、非の打ち所がない言葉である。紀元前二世紀ミリンダ王との対話では超越的な存在や奇跡を否定し、合理主義的なギリシア人をも感嘆させた哲学である。
欧米での仏教ブームとされる、1920年代日本からの禅のブーム、1960年代の神秘性が強いチベット仏教のブームは本来の釈迦の教えではない。当時のブームの頂点で絶大な視聴率を誇ったアメリカのTVドラマ『燃えよ!カンフー』は少林寺で修行した中国人とアメリカ人のハーフが主人公だが、ストーリーの柱は禅問答まがいの老荘思想が主だったし、カンフーが柔道になっていた。
そんな認識だったのが、現在はスリランカ、タイ、ミャンマーなどの釈迦の教えに近い上部座仏教が欧米で人気を得ている。それも、哲学として捉えられているという。
最新の知見では、生命の誕生は隕石の後期重爆撃によって、40億~38億年前頃、”局地的„“一時的„に還元大気が生じ、超高温の”衝撃後蒸気流„の中で一気に水素過剰の還元状態になったことで大量の有機分子がつくられたという説(中沢弘基著『生命誕生』より)があるが、最初の生命は1/fのゆらぎ(諸行無常)よって誕生したのではないだろうか。また、「全ての存在に、自我なるものはない」(諸法無我)というのは、生命は40億〜38億年前から連綿と続いていることを示しているのではないだろうか。個々の種の生命が重要なのではなく種の「生命」のリレーによって単細胞生物のバクテリアから延々とヒトに生命が受け渡され誕生したのだろう。ヒト個々はあまり重要ではなく、命を繋ぐことが重要なのだ。それ故、生きる目的は「生き抜いて生命を繋げること」と考えられる。
古代インドのバラモン教やチベットの神秘思想、果ては中国の儒教の影響の強い仏教もどきが日本に伝わった。結果、日本の仏教は様々な解釈のもと多数の宗派に分かれ、宗派同士の争いも多かった。なんと反仏教的なことだろうか!「この世は、恨みが恨みによって鎮まるということは絶対あり得ない。恨みは、恨みを捨てることによって鎮まる。これは永遠の真理である」というのにである。
宗教は、権力欲・金銭欲等々欲の塊としか思えないのは私だけではないはず(財務書類参照)。日本の仏教が現代社会に何か貢献しているのだろうか?釈迦のことばと真逆の葬式仏教になり下がった仏教は、猛省しなければならない。4月8日なんの日か知ってる人はどれだけいるだろうか?
だが、日本人は素晴らしい歌を詠んだ。
『色は匂えど散りぬるを/我が世誰ぞ常ならむ/有為の奥山今日超えて/浅き夢見じ酔ひもせず』