告白
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- ¥1,200
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発行者による作品情報
人はなぜ人を殺すのか――。河内音頭のスタンダードナンバーにうたいつがれる、実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、永遠のテーマに迫る著者渾身の長編小説。第四十一回谷崎潤一郎賞受賞作。
APPLE BOOKSのレビュー
独特のグルーヴ感あふれる文体とユーモアに満ちた描写、奇想天外な展開で知られる町田康の渾身の超大作にして代表作の一つ「告白」。明治時代に大阪で起きた大量殺人事件「河内十人斬り」の犯人、城戸熊太郎の人生を河内弁で生き生きと描き出す。赤阪村字水分で百姓の長男として生まれ育った熊太郎は、気弱で鈍くさい子供ながら誰よりも思弁的な性分で、心の内を河内の百姓の言葉で話すことができない自分を持て余していた。欲望を素直に表に出すことを恥だと思ってしまう熊太郎は、他の若者たちが安々とこなす農作業や恋愛もうまくいかず、村人たちには「あほでもできることができぬ大たわけ」として蔑(さげす)まれてしまう。心を入れ替えて農作業を試みても、生来の思弁癖と怠けぐせが頭をもたげ、結局酒を飲んでは賭博に興ずるばかり。長じて侠客くずれのようになった熊太郎は奇跡的に村一番の美女・縫と添うが、親友だと思っていた男に寝取られ、その兄に金を騙し取られてしまう。博打打ちなのに純粋で性善説に準じる熊太郎が窮地に陥る様は、面白おかしくも次第に胸が苦しくなる。自らの思考を言葉として表出させることにこだわるゆえに苦悩する、熊太郎の「告白」が哀切に響く。