東京バンドワゴ‪ン‬

APPLE BOOKSのレビュー

4世代同居の堀田家のドタバタな日常風景を描いたホームコメディ『東京バンドワゴン』。2006年に発表されると、ご近所さんから持ち込まれる困りごとを解決する人情話が人気を呼び、毎年4月に新刊が出版される長寿シリーズとなった。東京の下町で、明治創業の老舗古本屋兼カフェ「東京バンドワゴン」を経営する堀田家。当主の勘一、79歳と、孫たちがのれんを受け継ぎ、少々変わった経営方針で古書界では知らない人はいない存在になった。家族構成も少々変わっており、勘一の長男、我南人は60歳の今も伝説のロック歌手で、謎の愛人が産んだ青を堀田家に迎え入れ、青と異母姉弟の藍子も未婚の母だったりと、なかなかワケあり。それでもさまざまな思いや事情を詮索せず、一つ屋根の下で明るく暮らす彼らの思いやりに、心がほっこりしてくる。毎日、大騒ぎの堀田家を見守るのは、2年前に死去した勘一の妻、サチ。幽霊ゆえに自由自在に飛び回り、テレビのように実況中継する語り口に笑いがこみ上げる。町内の名物家族におじゃましたような気持ちで楽しみたい。