草枕 草枕

Utgivarens beskrivning

「草枕(くさまくら)」

夏目漱石(なつめ そうせき、1867(慶応3)年〜1916(大正5)年)の書いた小説です。
書出しの「山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。智(ち)に働けば角(かど)が立つ。情(じょう)に棹(さお)させば流される。意地を通(とお)せば窮屈(きゅうくつ)だ。とかくに人の世は住みにくい。」で有名です。
熊本県小天温泉がモデルの温泉場で、絵描きの男が美しい女と出会います。
男女の不思議な距離感と、非人情な芸術論で、煙に巻かれたような、美しいものを見たような、名作です。
お色気シーンもあります。

旧字旧仮名で総ルビ、縦書きの電子書籍にしました。
草枕と言えば、このイメージ。

ラストの台詞が、本によって「よ」が付いたり付かなかったりします。
無い方が二人の非人情にそぐうような、そうでもないような。
はてな。

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彼(かれ)は髮剃(かみそり)を揮(ふる)ふに當(あた)つて、毫(がう)も文明(ぶんめい)の法則(はふそく)を解(かい)して居(を)らん。頰(ほゝ)にあたる時(とき)はがりゝと音(おと)がした。揉(も)み上(あ)げの所(ところ)ではぞきりと動脈(どうみやく)が鳴(な)つた。顋(あご)のあたりに利刃(りじん)がひらめく時分(じぶん)にはごり〳〵、ごり〳〵と霜柱(しもばしら)を踏(ふ)みつける樣(やう)な怪(あや)しい聲(こゑ)が出(で)た。しかも本人(ほんにん)は日本(にほん)一の手腕(しゆわん)を有(いう)する親方(おやかた)を以(もつ)て自任(じにん)して居(ゐ)る。
最後(さいご)に彼(かれ)は醉(よ)つ拂(ぱら)つてゐる。旦那(だんな)えと云(い)ふたんびに妙(めう)な臭(にほ)ひがする。時々(とき〴〵)は異(い)な瓦斯(ガス)を余(よ)が鼻柱(はなばしら)へ吹(ふ)き掛(か)ける。是(これ)ではいつ何時(なんどき)、髮剃(かみそり)がどう間違(まちが)つて、何所(どこ)へ飛(と)んで行(ゆ)くか解(わか)らない。使(つか)ふ當人(たうにん)にさへ判然(はんぜん)たる計畫(けいくわく)がない以上(いじやう)は、顏(かほ)を貸(か)した余(よ)に推察(すゐさつ)の出來(でき)よう筈(はず)がない。得心(とくしん)づくで任(まか)せた顏(かほ)だから、少(すこ)しの怪我(けが)なら苦情(くじやう)は云(い)はない積(つも)りだが、急(きふ)に氣(き)が變(かは)つて咽喉笛(のどぶえ)でも搔(か)き切(き)られては事(こと)だ。
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*目次*
├草枕
│├一
│├二
│├三
│├四
│├五
│├六
│├七
│├八
│├九
│├十
│├十一
│├十二
│└十三
└底本などに関する情報

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