地下室の手記
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وصف الناشر
「この作品はドストエフスキーの全作品を解く鍵だ」アンドレ・ジッド
(この本について)
この本は、「プロジェクト杉田玄白」(http://www.genpaku.org/)の正式作品「地下室の手記」を元に作成しました。
実に勢いのある優れた翻訳だと思います。他の訳者で何度も読んだ作品ですが、今回この新訳で改めてこの作品の持つ力を感じました。
若干の誤植を訂正し、またほんの少しですが、元訳文の勢いを削がない程度に表現を改めた部分があります。
また読みにくい漢字には適宜ルビを振り、いくつかの注を「割り注」の形で入れました。
(「地下室の手記」について)
ドストエフスキーは、1821年にモスクワの貧民救済病院の医師の次男として生まれました。ロシアが生んだ最高で最大の作家として、トルストイと並び称されています。
特に晩年に立て続けに発表した五大長編(「罪と罰」、「白痴」、「悪霊」、「未成年」、「カラマーゾフの兄弟」)は、最も影響力の強い作品として、現在でもさらにその存在価値を高めつつあります。
そして、これら五大長編を準備する作品として、この「地下室の手記」が大きくクローズアップされています。この作品で萠しかけた芽は五大長編で成長し、大きなテーマとなって深められていきます。
……僕はまた、二時間の間、僕がこの人間と一言も言葉を交わさなかったこと、まったくその必要があると考えなかったことも思い出した。なんと僕はなぜかさっきまでそれでいいと思っていた。ところが今、突然はっきりと見えてきたのだ。愛もなく、野蛮に、恥知らずに、真実の愛の頂点となるところからいきなり始める、女を買うという行為の馬鹿げた、蜘蛛のように忌まわしい意味が。僕たちは長い間そうして互いを見ていたが、彼女がその目を、僕の目を前にして伏せないし、その目つきを変えないので、最後には僕はなぜか恐ろしくなった。……
(本書 第二部6よりの引用)
この部分は、変奏され深められ「カラマーゾフの兄弟」では次のようにドミートリーによって語られます。
……美と言う奴はおそろしいものだな。神様は人間に謎ばかりかけているよ。美の中では両岸が出会って、矛盾が一緒になっているんだ。(中略)その上俺がどうしても我慢できないのは、美しい心と優れた理性を持った人間がマドンナの理想を持ちながら結局ソドムの理想をもって終わるということなんだ。いや同時に二つの理想をいただいている奴もいる。いや人間の心は広い。広すぎるくらいだ。俺はもう少し縮めてみたいよ。理性の目に汚辱と見えるものが感情の目にはすばらしい美に見えるんだからなあ。
(カラマーゾフの兄弟、熱烈な心の懺悔)
(古典教養文庫について)
古典教養文庫は、日本のみならず広く世界の古典を、電子書籍という形で広めようと言うプロジェクトです。以下のような特長があります。
1、古典として価値あるものだけを
これまで長く残って来たもの、これから長く読み継がれていくものだけを選んで出版します。
2、読みやすいレイアウト
文章のまとまりを、適切な改ページで区切って、iPhoneはもちろん、iPadやMacでの読書に最適化しました。また、作品の一編一編にも索引を付けましたので、目次から直接アクセスできます。
青空文庫をベースとしている場合も、適切に処理してありますので、そのまま青空文庫の物をダウンロードして読むよりも格段に読みやすくなっています。
3、美しい表紙
プロのデザイナーによる美しい表紙をつけました。書籍と関連づけられた美しい表紙で、実際の本を読むような感覚に浸れます。
4、スピーディーな改版
紙の本と違い、誤植の修正や改訂などすぐに対応でき、刻々と進化を続けます。