やや あって ひばりのうた
-
- ¥1,600
-
- ¥1,600
発行者による作品情報
天使との格闘──。詩的表現のはじまりに横たわるかくも美しく破壊的な神話的光景。書くことを呼びかけるものと呼び止められて詩を書く詩人とのあいだの原初的な闘争の光景。日本の九十年代を代表する傑作と絶賛された千慶烏子の『ややあってひばりのうた』。
あなたは妹の黒い靴下をはき、わたしはお兄さまの革のベルトをしめて、おたがいの胸乳をおのおのの口に吸い合うのです。あなたは妹の黒いリボンをつけ、わたしはお兄さまの黒い靴紐をしめて、おのおのの口に青い鱒をつりあげるのです。水しぶきをあげて勃起している青い魚をおたがいの口にさがしあてては、それをおのおのの口に吸い合うのです。そうしてあなたはわたしの野良猫のようにまるいおなかに、そうしてわたしはお兄さまの牝猫のようにきれいなおしりに、杜撰な虚言を突き立てあってはおたがいの青い鱒をおのおのの口に吸い合うのです。(本書より)