かっかどるどるどぅ
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- ¥1,600
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発行者による作品情報
68万部を突破し、全国に感涙を与えた文藝賞・芥川賞受賞作『おらおらでひとりいぐも』から6年。「みんなで生きる」をテーマに据えた著者の新境地!
APPLE BOOKSのレビュー
孤独な登場人物たちが共に生きていくことをテーマにした、芥川賞受賞作家、若竹千佐子の2作目。前作『おらおらでひとりいぐも』で鮮烈な印象を残した東北弁で紡がれる滋味深い人生譚は、本作でも健在だ。60代後半になった今も女優になる夢を諦めきれず、生活に行き詰まる悦子。舅姑(きゅうこ)の介護に明け暮れ、気付けば自らも年老いていた芳江。大学院を出たものの非正規雇用の職を転々としている30代の理恵。生きづらさを抱え、自死を考える20代の保。年齢も境遇も異なる4人は、とある古いアパートの一室で出会う。そこは訪れる人たちに食事を振る舞う、吉野という不思議な女性の自宅だった。本作の東北弁独特の筆運びに慣れるまでには、少し時間がかかるかもしれない。しかしひとたびなじんだ後には、その飄々(ひょうひょう)たるリズムを通してキャラクターが生き生きと躍りだすのが感じられるだろう。家族や社会から疎外された4人の心境が、“老い”という誰もが経験する未来への不安とともに読者の心にじんわり染み渡り、そこにいたわりにも似た共感を呼び起こしていく。悦子たちが孤独を分かち合い、家族と社会を再生していく道のりの先に、希望の光を灯す一作。