この世で最後のデートをきみと
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4.6 • 7件の評価
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- ¥1,300
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発行者による作品情報
売るものは「恋人との最後の時間」――女子高校生・夜見川麻耶は、死を求める客に、二人きりの最後のひとときと、望む形での死を与える日々を送っていた。大切な相手を死に導く宿命から他人を愛することが許されない麻耶は、同じく大きな宿業を負った青年と、運命的な出会いを果たす……
APPLE BOOKSのレビュー
痛みを伴うほどの深い心理描写で読者を強く揺さぶる作家、坊木椎哉。「ピュグマリオンは種を蒔く」で第1回ジャンプホラー小説大賞の銅賞に輝いた著者による渾身作「この世で最後のデートをきみと」。高額な料金と引き換えに依頼人の奇妙な願望に手を貸すサービス"あずらえる"で働く女子高生と、とある理由から従業員として働くことになった青年の交流を、"マスク男"による謎の通り魔事件を軸に描く。金銭を介した命のやり取りが平然と行われる倒錯した世界観ながら、登場人物たちの背景にあるのは今の時代を生きる誰にも共通する喪失感。激しいシーンの連続に驚愕させられるが、求めても得られない親からの愛情や、満たされない承認欲求など、何かを失い傷つきながら、それでも居場所を探してさまよう人々の生きざまやむき出しの言葉には、心を動かす確かな説得力が宿っている。物語の先に待ち受けるのは、衝撃的ながらも、かすかな希望を感じさせる結末。音楽のようにテンポよく流れ出す文体、最後まで駆け抜けるスピード感で読み進めることができる。