しろがねの葉(新潮文庫)
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3.7 • 3件の評価
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- ¥880
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発行者による作品情報
銀(しろがね)の光を見つけた者だけが、この地で生きられる――。父母と生き別れ、稀代の山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、石見(いわみ)銀山の坑道で働き始める。山に穿(うが)たれた深い闇に恐れと憧れを抱きながらも、そこに女の居場所はない。熱く慕う喜兵衛や、競うように育った隼人を羨むウメだったが、勢いを増すシルバーラッシュは男たちの躰(からだ)を蝕(むしば)んでゆく……。生きることの苦悩と官能を描く、直木賞受賞作。(解説・北方謙三)
APPLE BOOKSのレビュー
第168回(2022年下半期)直木賞受賞作 - 戦国時代末期の石見銀山を舞台にした自身初の時代小説『しろがねの葉』。現代を舞台にしたリアルな恋愛小説『あとかた』と『男ともだち』で、直木賞に2度ノミネートされた著者、千早茜が、世界遺産である「石見銀山遺跡とその文化的景観」を観光で訪れた際「銀山の女性は3人の夫を持つ」という言い習わしに触発され、銀山で働く少女ウメの一代記を生み出した。凶作と唐入りへの徴用から逃れるため、ウメの家族は稼げると噂の銀山を目指して農村から夜逃げする。しかし、ウメは家族とはぐれ、石見銀山の天才山師、喜兵衛に拾われた。夜目の利くウメは雑用係の手子(てご)としてかわいがられるが、銀山の間歩(坑道)は女人禁制。成長とともにウメは間歩には入れなくなり、妻として、母として、銀山の町で生きることになる。粉じんで肺を病み黒い血を吐いて死ぬ堀子の男たちを、ウメは何人も見送る。銀山に魅せられ、消えていった名もなき人々の性と死、そして無念を、千早は濃厚かつエロチックに浮かび上がらせた。