とらすの子
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- ¥880
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発行者による作品情報
「とらすの会」の人は皆優しくて、居心地が良かったです。特にマレ様なんて嘘みたいに綺麗で、悩みを聞いて抱きしめてくれました。でも“会議”では、誰かが「許せない人」への恨みをマレ様に訴えて、周りの人たちも口々に煽って……翌日、その人は死体で見つかるんです。それが怖くて行かなくなったら、裏切者って責められて……。時間がないです、私、殺されます──錯乱する少女は、オカルト雑誌のライター・美羽の眼前で、爆発するように血肉を散らして死んだ。スクープを狙った美羽は「とらすの会」を訪ねるが、マレ様と出会うことで想像を絶する奈落へと突き落とされる──。/解説=織守きょうや
APPLE BOOKSのレビュー
ウェブ小説『ほねがらみ』が書籍化されて話題となった新進気鋭のホラー作家、芦花公園が描く、異様な事件の顛末(てんまつ)。令和某年、性別、年齢を問わず40人以上の男女が残忍な方法で立て続けに惨殺される都内無差別連続殺人事件が発生した。弱小オカルト雑誌のライター、坂本美羽は事件と関わる少女ミライと出会い、“とらすの会”という謎の団体の存在を知る。いじめやリストラに遭い、人生を踏み潰されたと信じる会員たち。その中心にはマレ様と呼ばれる絶世の美女がいて、“会議”で名を告げられた許せない人間を殺してくれるという。「時間がないです、私、殺されます」と、怖くなって会を避けたミライは、美羽の目の前で…。以降の男子中学生、女性警察官のパートでの視点の切り替え、あるいは日記やネット記事の引用など、ホラー演出に寄与する語りの技巧が、読者を見事に翻弄(ほんろう)する。超越的な存在と人間の嫌らしさとの対比は、極めて現代的。だが、不可解な恐怖の根源をなすものの存在感が何より秀逸で、最後の一行の衝撃もすさまじい。恐怖と愉悦の相克。