ウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在
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5.0 • 4件の評価
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発行者による作品情報
ウイルスとは何者か。その驚くべき生態が明らかになるたびに、この問いの答は書き替えられてきた。ウイルスは、数十億年にわたり生物と共に進化してきた「生命体」でありながら、細胞外ではまったく活動しない「物質」でもある。その多くは弱く、外界ではすぐに感染力を失って“死ぬ”。ただし条件さえ整えば、数万年間の凍結状態に置かれても、体がばらばらになってしまったとしても“復活”する。ウイルスの生と死は、生物のそれとはどこかずれている。一部のウイルスは、たびたび世界的流行を引き起こしてきた。ただしそれは、人類がウイルスを本来の宿主から引き離し、都市という居場所を与えた結果でもある。本来の宿主と共にあるとき、ウイルスは「守護者」にもなりうる。あるものは宿主を献身的に育て上げ、またあるものは宿主に新たな能力を与えている。私たちのDNAにもウイルスの遺伝情報が大量に組み込まれており、一部は生命活動を支えている。ウイルスの生態を知れば知るほど、生と死の、生物と無生物の、共生と敵対の境界が曖昧になっていく。読むほどに生物学の根幹にかかわる問に導かれていく一冊。
カスタマーレビュー
価格と比べ内容が深いウィルス学の名著
武漢でウイルスが発生し、パンデミックになったことで最新の情報をと思い購入しました。
難しい内容な割に、なんと読みやすい著書でしょうか。
一気に(数日で)読むことができ、しかも読み進む毎に益々興味関心が湧いてきました。
ウィルスは19世紀末に初めて発見されたが、ウィルス学として研究が進展するには、1950年代の電子顕微鏡の多方面での活用や遺伝子解析技術が現れるまで待たなければならなかった。著者はその真っ只中で研究をなされている訳で、著者のウィルス学研究と技術的な飛躍がリアルタイムで一致していることが本書の特徴です。
それ故に、ウィルス学の歴史について具体的に事実をあげて詳細に説明しているだけでなく、最新の知見についても註として数多くのエビデンスがあげられています。現状、これだけのコスパ(価格と内容)のよいウィルス学の著書は存在しないといえるほどです。
「温暖化により溶けた凍土層から、太古のウィルスが出てくる可能性がある」「ウィルスは生と死の境界を軽々と飛び越えているように見える」「ヒトゲノムの約9%が内在性レトロウィルスで占められている」「ヒト胎盤の合胞体栄養膜細胞」「がん溶解性麻疹ウィルス」等々「これは面白い!」と唸ることが満載です。