オキナワの少年
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1.0 • 1件の評価
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- ¥490
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発行者による作品情報
戦後の日本から取残され病める部分を集約して担わされたオキナワ。無垢な少年の眼が捉えたオキナワの現実。表題作は、広く話題を呼んだ第六十六回芥川賞受賞作品である。併録作品の「島でのさようなら」は集団就職の船に乗る少年の苦い胸のうちを切実に描き、「ちゅらかあぎ」は、住み込み工員、浮浪者、日雇いなどなど、転々と居場所を変え、都市の底辺をさまようオキナワ出身の少年の、孤独と憧憬を緻密に綴る。これは著者初めての書き下し作品である。
APPLE BOOKSのレビュー
第66回(1971年下半期)芥川賞受賞作。戦後の米軍占領下の沖縄の姿を少年の一人語りで描いた短編で、翌年の沖縄返還を前に同賞を受賞。親が米兵相手の風俗店を営むぼくは、今日も寝ているところをおっかあに起こされ、客と寝るミチコーねえさんのためにベッドを貸す。敗戦でサイパンから引き揚げてみると、おじいの畑は滑走路の下敷きになっていて、コザの町に移ってきたのだ。植民地主義の日本の敗戦後、今度はアメリカからの占領を受けて、女性の肉体が搾取され、ドルで暮らすオキナワの現実。「嫌だ」を意味する「べろやあ!」など、沖縄言葉の多用も効果的で、無垢(むく)な少年の視点から、オキナワの複雑な様相を描き出す。ロビンソン・クルーソーを気取って無人島へ行こうとする少年の、自由への憧れが切ない。トルストイを読んで高校を辞め、基地で働いた後、集団就職の船に乗る「島でのさようなら」、上京後、製本の住み込み工員、運送店などの日雇い、放浪生活と、都市の底辺を漂いながら文学を志す「ちゅらかあぎ」の2編を併録。どれも自伝的な作品で、権力を嫌い、自由を希求し、投げ出すように生きながら、それでもオキナワの記憶を忘れない作者の姿勢は一貫している。