



地のはてから(上)
-
-
3.8 • 5件の評価
-
-
- ¥770
-
- ¥770
発行者による作品情報
凍てつくオホーツク海に突き出し、人も寄せ付けぬ原生林に覆われた極寒の地・知床。アイヌ語で「地のはて」と呼ばれたこの地に最後の夢を託し、追われるようにやってきた開拓民の少女。物心ついたときにはここで暮らしていたとわは、たくましく生きる。今日から明日へ、ただ生き抜くことがすべてだった。中央公論文芸賞受賞。(講談社文庫)
APPLE BOOKSのレビュー
明治、大正期にかけて盛んだった北海道開拓移民として、アイヌ語で「地のはて」と呼ばれた未開の地、知床へと移住したある女性の物語。父が投資に失敗したことで、まだ幼いとわは家族4人で福島から北海道へと夜逃げすることになる。当時の北海道では開墾した土地の所有権がもらえたため、起死回生を狙った移住ではあったが、ようやくたどり着いたイワウベツの地は、事前に聞かされていた話と大きく異なり、歩道すらない未開の地だった。故郷への未練が捨てきれない母や兄と比べ、幼かったために福島時代の記憶がないとわは大自然の中でたくましく育つ。しかしようやくの思いで父母が耕した大地はろくな実りをもたらさず、そのわずかばかりの畑もバッタに食べ尽くされる始末。さらに現金収入のため出稼ぎに出ていた父が溺死。とわの母は生きるため、鳥取からの開拓移民の後妻となる。不満を抱えながらも新しい家族になじんでいったとわだったが、家が火事になったことで彼女の運命も大きく変わっていく。ただ生きるということが、とてつもない困難を伴った当時の開拓移民たち。なかでも女性たちの置かれた厳しい状況に、胸が締め付けられる。