にわか雨
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- ¥550
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発行者による作品情報
以前から侍になりたい百姓の平太は、尾張織田との合戦に雑兵として駆り出されたが、初陣が負け戦となってしまい、脱出するも…。
尾張織田家を攻め滅ぼすべく、駿河今川家の雑兵として駆り出された百姓の平太。以前から侍になりたかった平太は、意気揚々と出立するも、初陣が負け戦となってしまう。命からがら戦場から脱け出せはしたものの、一瞬の大雨が惨劇をもたらした…。敵も味方も次々と斃れていく様を目の当たりにした若者の心は折れてしまうのか、それとも―。刀槍と大地、人が選ぶべきはどちらなのか?傑作戦国時代小説。
APPLE BOOKSのレビュー
『口入屋用心棒』シリーズなど、数々の人気時代小説を手掛ける鈴木英治の傑作。今川義元の統治下にある駿河国の農民が、武士になることを目指して意気揚々と戦陣に参加し、かの有名な桶狭間の戦いを経験する。織田信長の劇的勝利となった歴史的合戦を、負けた側の、しかも一兵卒の視点から描いている点が斬新。また静岡県出身の著者によって、駿河国の風景と、そこで生きる人々の営みがリアルに、かつ丁寧に描写される。大名の勢力争いに巻き込まれながら、時には徴兵され、時には武士を目指して自ら戦場に赴く農民たち。敵味方を問わず大量の死者を出す武士と、田畑を耕して作物を育てる農民と、果たしてどちらが人間らしいのか。人間の生きる本質を問いかけながら、一人の若者の成長を描く青春物語でもある。日本農業新聞で連載されていただけあって、名だたる戦国大名でも、立身出世を目指して活躍する武士でもなく、日々の暮らしを続ける農民にこそ、日本人本来の姿が見えてくる様が描かれている作品だ。