山猫の夏 【新装版】
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発行者による作品情報
船戸冒険小説の原点(ブラジル篇)。ブラジル東北部の町エクルウは、アンドラーデ家とビーステルフェルト家に支配されている。両家はことごとに対立反目し、殺し合いが絶えない。そんな怨念の町に、<山猫(オセロット)>こと弓削一徳(ゆげいっとく)がふらりと現れた。山猫の動く所、たちまち血しぶきがあがる。謎の山猫の恐るべき正体はいつ明かされる? 南米3部作第1弾。 (講談社文庫)
APPLE BOOKSのレビュー
冒険小説家の船戸与一の名を轟(とどろ)かせた初長編『山猫の夏』。続く『神話の果て』『伝説なき地』と共に、南米3部作と呼ばれている。1979年の小説家デビュー前は、外浦吾朗のペンネームで『ゴルゴ13』の脚本を担当していた船戸。本作は、現実世界の国際情勢を織り込んだ、スケール感のあるハードボイルドだ。突然現れた“山猫”こと、正体不明の日本人がブラジルのきな臭い町を情け容赦なく争乱の渦に巻き込んでいく。現地取材を行い、完成までに2年もかけただけあって、舞台となったブラジル東北部の町エクルウを包む熱気と湿気が行間から立ち上がる。バスは週1便という陸の孤島に流れ着いた日本人の“おれ”は、アンドラーデ家とビーステルフェルト家が長年抗争を繰り広げる中で、中立的オアシスの酒場で働く。そこへ、漆黒のタキシードに身を包む日本人が現れた。眼光鋭くしなやかな体を持つ弓削一徳こと山猫は、両家に発生したトラブル解決のために呼ばれたのだった。追跡、復讐、そして山猫の正体が明かされる10日間。簡潔でリズム感ある文体が小気味よく、726ページも一気読みできるだろう。