虹の谷の五月 下
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- ¥720
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発行者による作品情報
【第123回直木賞受賞作!】トシオ・マナハン、14歳。セブ島で祖父とふたりで闘鶏用の軍鶏を育てている。ゲリラのホセ・マンガハスが住む「虹の谷」への道を知っていたことから暗殺、誘拐の硝煙の宴に巻きこまれていく。少年の夢。怒りと誇り。愛する者との別れ。慟哭の叫びを胸奥に沈め、少年は男へと脱皮して行く。第三世界の片隅から世界を睥睨する冒険小説、感動の巨編。
APPLE BOOKSのレビュー
第123回(2000年上半期)直木賞受賞作。日本屈指の冒険小説作家、船戸与一がフィリピン、セブ島のガルソボンガ地区を舞台に少年の3年間を描いた成長小説。1998年、ジャピーノと呼ばれるフィリピンと日本の混血児である13歳のトシオは、日本人の父に捨てられた娼婦の母をエイズで失い、かつて抗日人民軍の英雄だった祖父ガブリエルと闘鶏の軍鶏を育てて暮らしている。村の奥地、まん丸の虹が出る「虹の谷」へ行く道はトシオしか知らないが、そこには元新人民軍のゲリラで懸賞金をかけられたホセが住み、孤独な闘いを続けている。日本人画家と結婚し、金持ちになって戻ってきたクイーンと呼ばれる女に谷への道案内をしたトシオは、それから毎年5月に起きる血なまぐさい事件に巻き込まれていく。クイーンの帰還は辺境の地において資本主義消費社会の流入を意味し、復讐、暗殺、誘拐と年を追うごとに金銭目当ての事件が勃発。トシオは理不尽な搾取を繰り返す警察や地区首長の小悪党に踏みつけにされるが、誇りを失わない祖父やホセに感化され、大人への成長を遂げる。壮絶なアクション、無慈悲な死もすさまじいが、幼い少年を主人公にしたことで、作者自身も新たな希望を得た快作。