虹の谷の五月 上
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4.0 • 5件の評価
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発行者による作品情報
【第123回直木賞受賞作!】トシオ・マナハン、13歳。フィリピン、セブ島のガルソボンガ地区に祖父と住み、闘鶏用の軍鶏を育てる日々だった。奥地の「虹の谷」には元新人民軍のゲリラ、ホセ・マンガハスがひとり住みついて闘い続けている。そこへ行く道はトシオしか知らない。日本から戻ってきたクイーンを谷に案内したことから、トシオはゲリラたちの内紛に巻きこまれていく。直木賞受賞の壮大な少年の成長物語。
APPLE BOOKSのレビュー
第123回(2000年上半期)直木賞受賞作。日本屈指の冒険小説作家、船戸与一がフィリピン、セブ島のガルソボンガ地区を舞台に少年の3年間を描いた成長小説。1998年、ジャピーノと呼ばれるフィリピンと日本の混血児である13歳のトシオは、日本人の父に捨てられた娼婦の母をエイズで失い、かつて抗日人民軍の英雄だった祖父ガブリエルと闘鶏の軍鶏を育てて暮らしている。村の奥地、まん丸の虹が出る「虹の谷」へ行く道はトシオしか知らないが、そこには元新人民軍のゲリラで懸賞金をかけられたホセが住み、孤独な闘いを続けている。日本人画家と結婚し、金持ちになって戻ってきたクイーンと呼ばれる女に谷への道案内をしたトシオは、それから毎年5月に起きる血なまぐさい事件に巻き込まれていく。クイーンの帰還は辺境の地において資本主義消費社会の流入を意味し、復讐、暗殺、誘拐と年を追うごとに金銭目当ての事件が勃発。トシオは理不尽な搾取を繰り返す警察や地区首長の小悪党に踏みつけにされるが、誇りを失わない祖父やホセに感化され、大人への成長を遂げる。壮絶なアクション、無慈悲な死もすさまじいが、幼い少年を主人公にしたことで、作者自身も新たな希望を得た快作。