オルフェウスの窓(1‪)‬

APPLE BOOKSのレビュー

フランス革命を舞台とした名作「ベルサイユのばら」の著者・池田理代子が描く長編マンガ「オルフェウスの窓(1)」。ドイツ・レーゲンスブルクの音楽学校に通う3人の若者が、悲恋の伝説が残る「オルフェウスの窓」の窓越しで出会い、運命の恋に翻弄されていく。貴族の名家、アーレンスマイヤ家の財産を引き継ぐため、不本意にも女でありながら男として育てられたユリウス。ロシア出身の情熱的かつ天才的なバイオリニスト・クラウス。貧しい家庭で育ち、不遇ながらもピアニストとして将来有望なイザーク。卓逸した才能を持ちながら人知れぬ事情を抱えた個性的な登場人物たちを、著書は得意の細やかな心理描写で活写する。彼らの恋愛模様は煌びやかでありつつも、思春期ならではの瑞々しさもあり魅力的。勝気で気丈なユリウスがクラウスに恋心を抱き、女性としての感情が芽生えていく姿には胸が締め付けられる。物語の舞台はやがてウィーンやロシアへと移り、第一次世界大戦やロシア革命などの史実を背景に大きく展開していく。波乱に満ちた人間ドラマを最後まで見届けてほしい。