皇帝ナポレオン(1‪)‬

APPLE BOOKSのレビュー

フランス革命を舞台にした名作「ベルサイユのばら」の著者・池田理代子が、その後に続くナポレオンが活躍した時代を描いた「皇帝ナポレオン（１）」。フランス革命を起こした政府に反旗をひるがえし、王党派が武力蜂起した事件「ヴァンデミエールの反乱」。その鎮圧作戦の副官として功績をあげた26歳の若者、ナポレン・ボナパルトが、野心とともにフランス皇帝の地位に上り詰めていく姿を描く。若いながらも冷静沈着、頭脳明晰で、求心力も持ち合わせたナポレオン。本作ではそのようなカリスマ的なナポレオン像をなぞりながらも、一方では恋多き妙齢の女性に翻弄されたり、父を革命で亡くした少年に温情を寄せたりと、人間的な一面も描いている。想い人である未亡人・ジョセフィーヌに付き従われて赤面する様や、彼女から送られてきた手紙を胸を高鳴らせながら読む姿には、思わず親近感を抱いてしまうはず。激しい恋に身を焦がしながらも、やがて時代の渦の中に身を投じ一時代を築き上げるダイナミックな生き様を、華麗でドラマティックな世界観を得意とする著者ならではのスケールで描く本作は、孤高の英雄としてのイメージが強いナポレオンの新たな側面にも気付かせてくれる。