デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士
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- ¥800
発行者による作品情報
今度は私があなたたちの“言葉”をおぼえる
荒井尚人は生活のため手話通訳士に。あるろう者の法廷通訳を引き受け、過去の事件に対峙することに。感動の社会派ミステリー。
APPLE BOOKSのレビュー
手話通訳士を主人公にしたミステリーシリーズ『デフ・ヴォイス』の1作目。丸山正樹のデビュー作で、口コミから徐々に話題となり、シリーズ化された。ある事情から職を辞し、離婚も経験した元警察事務職員の荒井尚人。コーダ(耳の聞こえない親から生まれた聞こえる子ども)である彼は、両親も兄もろう者である家族の中で疎外感を抱き、葛藤しながら生きてきたが、再就職のために手話通訳士の資格を取る。その後、聴覚障がいのある子どもたちが暮らす施設の理事長が刺殺される事件が発生。ろう者の門奈哲郎が警察から行方を追われていると知り、衝撃を受ける。門奈は17年前に同じ施設で、今回の被害者の父親である当時の理事長を刺殺した。その時、警察署内から通訳として接見に立ち会った荒井に、門奈の娘は手話でこう問いかけた。「おじさんは、私たちの味方?それとも敵?」。黙秘権のような抽象概念を手話で伝える難しさや、“日本語対応手話”と“日本手話”の違いなど、ろう者と手話の世界を知ることと、ミステリーとしての面白さを結びつかせた点が見事。さまざまな立場にいる人々の思いを誠実な筆致で描き、ろう者と聴者のつながりをつかもうとする物語。