マインド・イーター[完全版]
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- ¥1,200
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発行者による作品情報
宇宙へ進出した人類に襲いかかったもの、それがマインド・イーター。ビッグ・バンの起こる前の宇宙の残滓であり、人間に対し悪意をもつ、数千の小天体の姿をした鉱物的存在である。M・E(マインド・イーター)は精神を食いちぎり、人間を完全に異質なものに変えてしまう。これをM・E症と呼ぶ。M・Eを破壊するため、連合はハンターと呼ばれるエリートを育成し宇宙へ送りつづけるが、その戦いは絶望的なものだった。そしてハンターがM・Eの顎(あぎと)に倒れると、いかに空間的に離れていようと、ハンターと精神的な結びつきの強い恋人や肉親までがM・E症を発症するのだ。日本SFの里程標的傑作を、シリーズ短篇を全作収録した完全版で贈る。
APPLE BOOKSのレビュー
1980年代のデビュー以降、文科系SFといわれるジャンルの中で頭角を現した作家、水見稜による「マインド・イーター[完全版]」。1984年に発表された表題作を含む、8編を収録。人間の精神を食べ、姿を変質させてしまう小惑星の姿をしたマインド・イーター、通称"M・E"。そのミステリアスな存在を通じて、物語は神秘的な方向へ展開し、宇宙の真理や人類の秘密に迫っていく。正体不明の存在と対峙する恐怖、そして進歩を宿命づけられているはずの人類が未来へ進み切れないことの歯がゆさが高い筆力で描かれていく。SFながら必ずしもテクノロジーが主題ではなく、人と人との関係性に焦点を当てながら、命とは、そして人間とは何かという哲学的な問いを、壮大なスケールで投げかける。筆者の圧倒的な想像力とともに、時代を経ても色あせない深遠なテーマが、ジャンルの枠を超えて読者を魅了し続ける不変の傑作。