ミスター・チームリーダー
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4.5 • 2件の評価
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- ¥1,700
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発行者による作品情報
勤務先で係長に抜擢された後藤は、ボディビルの選手でもあった。ある日、社内の人材の無駄に切り込み組織の代謝を上げると大会に向けて停滞中だった減量も進むことに気づき、身体を仕上げるべくチームの脂肪の除去に驀進し始める。肉体と組織がシンクロしたとき、たたき出されるのはベストパフォーマンスか、それとも――。
APPLE BOOKSのレビュー
ボディビル大会に初挑戦する女性会社員を主人公にしたデビュー作『我が友、スミス』でいきなり芥川賞候補に選出された石田夏穂が、会社員とボディビルの世界を再び描く『ミスター・チームリーダー』。真面目なのにシニカルで、照れたようにシレッと笑いを入れる文体は、今作でさらに磨きがかかった。今回のボディビルダー、後藤は入社9年で係長に昇進した大手リース会社の有能な社員。とはいえ、部下は1人を除いてやる気がなく、ミスも多い。なにより、常に何かを飲み食いし、体脂肪過多な姿が後藤をイラつかせる。というのも、2か月後に迫ったボディビル大会までに7キロの減量を目標にしているものの、ストイックな食事制限の効果がまったく出ず、焦る後藤の頭からは、コンプライアンス遵守やルッキズムといった単語が欠落してしまったのだ。脳内でブヨブヨな部下たちをこき下ろし、筋肉質なチーム作りのためにと他部署へと異動させてしまう後藤。ボディビルで培った体脂肪と筋肉のコントロール術は社内のチーム運営にも生かせるはずと、あらぬ方向へ覚醒した後藤の暴走と妄想にくすくす笑いが止まらない。