レーエンデ国物語
-
- ¥2,200
-
- ¥2,200
発行者による作品情報
毛布にくるまって読みふけった
あの頃のあなたへ――
家を抜け出して、少女は銀霧が舞う森へと旅に出た。
こんなファンタジーを待っていた!
ーーー
異なる世界、西ディコンセ大陸の聖イジョルニ帝国。
母を失った領主の娘・ユリアは、結婚と淑やかさのみを求める親族から逃げ出すように冒険の旅に出る。呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタン。
空を舞う泡虫、琥珀色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。ユリアはレーエンデに魅了され、森の民と暮らし始める。はじめての友達をつくり、はじめて仕事をし、はじめての恋を経て、親族の駒でしかなかった少女は、やがて帰るべき場所を得た。
時を同じくして、建国の始祖の予言書が争乱を引き起こす。レーエンデを守るため、ユリアは帝国の存立を揺るがす戦いの渦中へと足を踏み入れる。
APPLE BOOKSのレビュー
『煌夜祭』で知られる多崎礼による、大型ファンタジー小説『レーエンデ国物語』。15歳のユリアは英雄と呼ばれる父ヘクトルとレーエンデの地へ旅立つ。ヘクトルの目的は聖イジョルニ帝国領シュライヴァと帝国領内にありながらどこにも属さない“呪われた土地”レーエンデをつなぐ交易路を開くことだ。巨木の洞(うろ)で暮らす人々、光る虫を集めたランプ、特有の風土病である銀呪病(ぎんしゅびょう)。古代樹林が連なる不思議の国レーエンデは、堅苦しい階級社会であるシュライヴァとはすべてが異なっていた。シュライヴァの首長に連なる血筋として、己の役割を政略結婚だと信じていたユリアはレーエンデで道先案内人のトリスタンと過ごしていくうちに、人のためではない自分のための人生について考えるようになる。序章の「革命の話をしよう」という書き出しから、ぐいぐいと物語世界に引きつけられながら没入感を味わい、読み終わった後には放心しながらも猛烈に続きが気になってしまう。今後名作として語り継がれるであろうファンタジー小説シリーズの幕開けに立ち会えた幸せを、寿(ことほ)ぎたくなるような作品だ。