乱歩と千畝―RAMPOとSEMPO―
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4.0 • 2件の評価
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- ¥2,600
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発行者による作品情報
大学の先輩後輩、江戸川乱歩と杉原千畝。まだ何者でもない青年だったが、夢だけはあった。希望と不安を抱え、浅草の猥雑な路地を歩き語り合い、それぞれの道へ別れていく……。若き横溝正史や巨頭松岡洋右と出会い、新しい歴史を作り、互いの人生が交差しつつ感動の最終章へ。「真の友人はあなただけでしたよ」――泣ける傑作。
APPLE BOOKSのレビュー
日本の探偵小説の始祖、江戸川乱歩と、第二次世界大戦中に大勢のユダヤ人に“命のビザ”を発給した外交官、杉原千畝。同時代を生きた2人が、もしも出会っていたら…という奇想に導かれた波瀾(はらん)万丈の人間絵巻。第173回直木賞候補作。大正8年5月、早稲田のそば屋、三朝庵で相席になった平井太郎(後の江戸川乱歩)と杉原千畝。大学を卒業するも職を転々とし、古本屋と夜鳴き屋台で何とか生計を立てる乱歩と、外国語の仕事に就きたいが、父から示される進路に悩む大学生の千畝。共に旧制愛知五中から早稲田大学に進学した6歳違いの2人、彼らは以前にも出会っていた…。困難に遭うと逃げ出す乱歩と、外交官の能力と優しさに揺れる千畝。時に交わり、時に離れ、大きな歴史の中で2人の人生が交錯する。横溝正史、松本清張、松岡洋右、広田弘毅、美空ひばりなど、実在の人物を多数登場させ、虚実交えて語る筋運びも見事だが、乱歩と隆子、千畝とクラウディアという夫婦の物語としても感動的。壮大な歴史小説は作者の新境地だが、名作『ビッグ・ボウの殺人』が重要な小道具として使われ、ミステリー作家の気概が失われていないのも心憎い。