今宵も喫茶ドードーのキッチンで‪。‬

APPLE BOOKSのレビュー

ある街の奥にひっそりとたたずむ、お一人さま専用カフェ「喫茶ドードー」を舞台に、さまざまな悩みを抱えてやって来る客たちの人間模様を描いた群像劇。住宅地の路地の突き当たりに、うっそうとした木々に包まれた喫茶店がある。「森のキッチン」とも呼ばれるカフェは、なかなか見つけづらい場所にあるのに、日常に疲れてしまった人や、現実から逃げ出したくなっている人はなぜかたどり着くことができる。SNSに振り回されていた女性や、仕事を一人で抱え込む雑貨店の店長、お客様の要望やクレーム対応に嫌気が差していた美容師…。そんな人々の疲れた心身を、カフェのオーナー“そろり”がほぐしてくれる。コロナ禍だった非日常の日々の生きづらさも描かれつつ、現代の人々の悩みや葛藤は読者も共感することが多いだろう。心もおなかも満たしてくれる優しい物語が、肩の力を抜いて、自分のことをいたわって生きようと思わせてくれる。