他人の始まり 因果の終わり
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4.0 • 3件の評価
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- ¥1,700
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発行者による作品情報
家族は「他人の始まり」なのか。ECDが家出した母、自殺した弟など自分の家族をみつめ、病にかかった自らをみつめながら家族、そして生のありかを問い返す渾身の書き下ろし。
APPLE BOOKSのレビュー
日本のヒップホップシーンで黎明期から活動し、エッセイストとしても評価の高いアーティスト、ECDのエッセイ「他人の始まり 因果の終わり」。病に倒れ家族や知人に見守られながら過ごす日々をつづりながら、自分が生まれ育った"石田家"と、現在の自分を取り囲む家族を対比させ、戦後社会における"家族"の在り方を分析する。実母が残した日記や親族の証言、微かな記憶を通じて見えてくるのは、自身の家族がそれぞれ苦悩しながらも、強い想いを抱いて生き抜いてきた壮絶な姿。なぜ母親は失踪したのか、なぜ弟は命を絶ったのか、非情な現実が明らかにされていく。それらに真正面から冷徹に向き合いながらも、自らの深刻な病状や周囲の反応を淡々と記録していく姿勢には、文筆家としての矜持が感じられ、終始圧倒され続ける。著者が青春時代を過ごした昭和後期の風俗を織り交ぜながらつづられるエピソードはドラマチック。上質な映画やドラマのようでもあり、社会への鋭いメッセージを秘めたノンフィクションとしても楽しめる。