去年、本能寺で
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4.0 • 1件の評価
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- ¥2,200
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発行者による作品情報
アシカガ・ショーグネイト崩壊後、AIは長足の進歩を遂げる。軍事AIが合戦を司り、文事AIが詩歌、楽曲の生成に勤しむ世界で、つわものたちは何を思惟するのか? 歴史小説のはずが、ミステリあり、スペースロマンあり、アイドル活劇あり、異世界転生まであり! 何でもあり! 円城ワールド全開の戦乱ラプソディー!
APPLE BOOKSのレビュー
“純文学的な実験SF”とでも呼べる独自の領域を開拓し続けてきた作家、円城塔による歴史とSFを融合させた全11編からなる短編集。戦国随一の文化人、細川幽斎がAIとして思索を巡らせる「幽斎闕疑抄」、坂上田村麻呂が日本人ではなかったという説を基に、古代ローマ時代になぞらえた「タムラマロ・ザ・ブラック」、斎藤道三の“国盗り”を巡る歴史認識のズレを、作者独自の方法論で描いた「三人道三」、本能寺の変という誰もが知る事件が、可能性や想像力によって変容していく表題作など、史実を土台に俗説や異説も踏まえて歴史を再解釈した読み応えのある作品集だ。一般的な歴史小説の枠組みから逸脱した、SFならではの知的遊戯が楽しめる本書は、時に読者をメタフィクションの迷宮へと誘い込む。物語に身を委ねて没入するタイプの読書ではなく、思索の余白を味わう作品といえるだろう。円城塔のファンはもちろん、歴史とSFという掛け合わせに引かれる読者にはたまらない一冊である。司馬遼太郎風の語り口を取り入れながらも、巨星が築き上げた歴史小説という従来のジャンルに対して、新しい可能性を提示している点も見逃せない。