【合本版】漂砂の塔(上下巻)
-
-
4.8 • 6件の評価
-
-
- ¥1,700
-
- ¥1,700
発行者による作品情報
雪と氷に閉ざされた北方領土の離島・春勇留(はるゆり)島、ロシア名はオロボ島。日中露合弁のレアアース生産会社の日本人技術者が、両目を抉り取られた死体となって発見された。国際問題に発展しかねない重要事件として、捜査権が及ばないこの島に送られたのは、ロシア系クォーターで語学が堪能な警視庁の石上だった。極限状態で信じられるのは誰なのか。三ヵ国の思惑が交錯し、果てしなき欲望が渦巻く! 一気読み必至の超弩級冒険小説。上下巻を1冊にまとめた合本版。
カスタマーレビュー
読んでるだけで凍えそうなハードボイルド傑作
作者お得意の「隔絶された地域で奮闘する捜査官モノ」。
他には、最盛期の軍艦島を舞台にした「海と月の迷路」や南国の孤島の保安官の話「パンドラ・アイランド」がこの系統。今回の舞台は、ロシアと国境を接する北方群島の1つの島。凍てつく小さな島にレアアース採掘の為に日中露の3国の人間が入り乱れている。
その島で日本人作業員の惨殺死体が発見され、その調査に東京でロシアン・マフィアの潜入捜査に失敗したばかりの刑事が派遣される。
微妙に政治が絡み合うところに、権限はおろか身を守る武器すら与えられず放り込まれた主人公は、己が身の不運を呪いつつ、誠実さと粘り強さで味方を増やしつつ、事件の背後にある「島の秘密」に迫っていく。
絶海の孤島にある秘密に人々が翻弄される様は、「夢の島」を彷彿とさせる。
序盤の潜入捜査がバレた相手のロシアン・マフィアとの再会以降からは、正にノン・ストップ。作者お得意の正体不明の恐るべき殺し屋も登場にページをめくる手が止まらない。
しかし、一番恐ろしいのは作者の取材力と構成力か。1世紀近く前の北方諸島の島民の暮らしを含めた日露の関係を虚実ない混ぜとはいえ調べ上げ、エンターテイメントに仕上げる力量はさすがの手腕。満腹感半端ない。
唯一の不満は、妖しいヒロイン タチアナと主人公のその後をスッキリ納得させて欲しかった。