嫌いなら呼ぶなよ
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3.3 • 3件の評価
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- ¥770
発行者による作品情報
妻の親友の家に招かれた僕。バーベキューを楽しんでいると急に離婚裁判が始まり……怖すぎるのに笑えてくる〈ブラック綿矢りさ〉全開! 心に潜む「明るすぎる闇」に迫る全4作収録。解説=ふかわりょう
悪いのは不倫した「僕」だってもちろんわかってます。でも……。胸の奥でざわつく本音がスパークする表題作「嫌いなら呼ぶなよ」。プチ整形を明かしたら職場で執拗にいじられた「私」。吹っ切れて一発逆転を狙ったら、まさかの大成功?(「眼帯のミニーマウス」)。いっそ開き直って人生のリミッターごと外せ! 心に潜む「明るすぎる闇」に迫る全4作収録。パンクな毒が炸裂する、綿矢りさの真骨頂。
APPLE BOOKSのレビュー
等身大の女性の主人公を描くことの多かった綿矢りさが、社会に馴染めない人々をブラックユーモア全開で描いた短編集『嫌いなら呼ぶなよ』。図らずもコロナ渦によって浮き上がってしまった、“普通”の人々のすがすがしいまでの社会不適合ぶりが描かれた一冊だ。かわいいものとファッションが大好きで自分の理想にたどり着くために整形を繰り返す女性会社員を描いた「眼帯のミニーマウス」。動画サイトの中途半端な有名人を応援する厄介なファンを描いた「神田タ」。コロナ渦にもかかわらず不倫を繰り返す男性を描いた「嫌いなら呼ぶなよ」。その名も“綿矢りさ”という作家が取材をきっかけにライター、編集者とメールのccを介してもめにもめる様子を描いた「老(ロウ)は害(ガイ)で若(ジャク)も輩(ヤカラ)」など全4篇を収録。登場人物たちは皆、リアルではお近づきになりたくない人ばかりなのに、言い分には彼らなりの筋が通っていて、ある種の魅力すら感じる。他人事と笑って読んでいたはずなのに、うっすらシンパシーを感じている自分に気付き、ドキッとするのだ。何せ冒頭のエピグラフはパリス・ヒルトンだ。もう徹頭徹尾翻弄されるしかないだろう。