宝島(上)
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- ¥950
発行者による作品情報
しのびこんだ米軍基地で突然の銃撃。混乱の中、故郷(シマ)いちばんの英雄が消えた。英雄の帰還を待ち望みながら沖縄(ふるさと)を取り戻すため立ち上がる、グスク、ヤマコ、レイ。長じて警官となり、教師となり、テロリストとなった幼馴染たちは、米軍統治下の時代のうねりに抗い、したたかに生き抜こうとする。第160回直木賞、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞、三冠達成の傑作!
圧倒的熱量。
奪われた故郷を取り戻すため、
3人の幼馴染たちが米軍統治下の沖縄を駆け抜ける!
APPLE BOOKSのレビュー
第160回(2018年下半期)直木賞受賞作。米軍統治下の沖縄を舞台に、激動の時代を圧倒的な熱量で描き出す長編小説。米軍基地に忍び込み、食糧や物資を奪う“戦果アギヤー”のリーダーであるオンちゃんは、薬や小学校を建てるための木材などの「戦果」を現地の人々に惜しみなく与え、島の英雄と呼ばれていた。親友のグスク、弟のレイ、恋人のヤマコと共に、危ない橋を渡りながらも幸せな日々を過ごしていた彼だったが、最大の軍事基地である「キャンプ・カデナ」に忍び込んだ夜に失踪してしまう。かけがえのない存在を突如として失った3人は、彼を必死に探しながらも、グスクは警官、レイはテロリスト、ヤマコは教師として、それぞれの心の「宝」が導く道を歩み始める。オンちゃんはなぜ失踪したのか、彼が得た「予定にない戦果」とは何だったのか。運命に翻弄される沖縄で懸命に生きる若者たちの姿が、読者の心を熱くする。オンちゃんの行方にまつわるミステリー要素と、さまざまな登場人物が絡み合うストーリー展開に引き込まれ、沖縄の方言を巧みに編み込んだ文体が、まさにその場にいるような臨場感を演出する。当時の沖縄を包み込んでいた「熱」を追体験させてくれる。