



徳川秀忠 上
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3.7 • 15件の評価
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- ¥850
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発行者による作品情報
天下分け目の関ヶ原の戦に遅参し、父・家康の怒りを買った秀忠。後継者として認められながらも常に偉大なる父と比較され「凡将」との風評が立った。だが実際は違う。畿内でいまだ勢力を持つ豊臣方の監視を目的とした二条城の天下普請を強行、方広寺への放火、その一方で秀頼と千姫との婚儀をすすめるなど、硬軟取りまぜた深謀遠慮をめぐらしていたのだ。守成の将軍・秀忠の実像に迫る。
APPLE BOOKSのレビュー
歴史小説家・戸部新十郎の長編小説の一つで徳川幕府の二代目将軍・秀忠の知られざる活躍を描く「徳川秀忠 上」。実父・徳川家康の名声に比して低い評価を受けがちな秀忠。本作では服部半蔵の後継者・花垣秀政の視点から、秀忠の新たな魅力を発掘する。剣術に長けているが、決して戦上手ではなかった秀忠。関ヶ原の合戦を前に真田昌幸・幸村親子との戦いに敗れた上、合戦にも遅れ、家康の怒りに触れてしまうも、常に平常心を保っている。小姓を務める秀政から見た秀忠は、失敗を繰り返しながらもそれを恥じないどころか、失敗さえ計算ずくであったかのような余裕に満ちたヒーローとして映る。歴史小説ながらコミカルな語り口も楽しく、狸とも呼ばれるしたたかな本多正信、裏切った父と弟より任務を優先させる真面目人間の真田信幸など、個性豊かな側近たちの人間模様も読み応えがある。歴史の表舞台で語られることは少ないながら、新しい時代の形成に大きな役割を果たした武将たちの勇姿を堪能してほしい。