愛の領分
-
-
3.7 • 7件の評価
-
-
- ¥670
-
- ¥670
発行者による作品情報
妻に先立たれ、一人息子を育てながら静かに仕立て屋を営む中年の男。28年ぶりに突然現れた、かつての親友。その妻で、むかし男が恋焦がれた女。そして35年ぶりに訪れた故郷で出会い、男が年齢差を超えて魅かれる絵描きの女。度重なる再会が、互いのあやうい過去を明らかにしていく。許したいけど許せない、忘れたくても忘れられないことが4人には多すぎた……。大人の男女の愛憎、心の陰影を妖しく描いた直木賞受賞作。母親への想いを綴った、自伝エッセイも収録。
APPLE BOOKSのレビュー
第125回(2001年上半期)直木賞受賞作。白金で仕立て屋を営む淳蔵の元に、かつての友人だった高瀬が訪れる。探偵を使ってまで実現した28年ぶりの再会。高瀬の妻、美保子が難病を患い、淳蔵に会いたがっているという。妻を亡くし、一人息子と静かに暮らしている淳蔵だが、かつては自他共に認めるクールで嫌味な若者として、夜の街で知られる存在だった。早く老人になりたいと言うほどエネルギーを持て余していた高瀬とは対象的な存在だったが、気の置けぬ飲み仲間だった2人。美保子とは高瀬の思い人として知り合い、やがて彼女は高瀬の妻となった。ひそかに美保子に恋い焦がれていた淳蔵は、2人の結婚により一度はその思いを諦めたものの、とあることから美保子と心を通じ合わせるようになる。そして突然の別れ。淳蔵は上京以来35年も足を踏み入れなかった郷里信州で、かつての思い人との再会を決意するが、幸せに暮らしていたはずの高瀬夫妻は、重苦しい雰囲気に包まれていた。淳蔵、高瀬、美保子、そして淳蔵の初恋相手の娘、佳世。それぞれ胸に深い傷を抱えた4人の大人たちの愛を、因縁や打算、執着、性といった影の部分まで余すことなく描いた、大人の恋愛小説。