扇谷家の不思議な家じまい
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- ¥1,900
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発行者による作品情報
地方都市・天島市で造船業を営んできた大家・扇谷家で2025年4月、予言者として一族を繁栄させてきたおばあさまの手帳が見つかった。手帳によると、おばあさまは100歳となる今年死亡するらしい。一族の皆が集まり、家じまいをすることになるのだが、本家の娘・立夏には気になることがあった。それは認知症になって以来、おばあさまが繰り返し「若い頃、桜の木の下に死体を埋めた」と言っていたことと、言葉なき者の声を聞く能力を持つ立夏は、それが本当だと知っていること――。
APPLE BOOKSのレビュー
「これから起こることには、すっかり決まっているものとまだ揺れ動いているものの二種類がある」。この言葉を口癖にする“おばあさま”をはじめ、一族の女性は不思議な力を持つという扇谷家の、時におかしく、時に悲しい、4代にわたる家族の物語。造船業で財を成した地方都市の名家である扇谷家。もうすぐ100歳になる時子が介護施設に入り、空き家になって久しい屋敷の掃除に来たひ孫の立夏は、時子が自らの死の日付を記した予言帳を見つける。一族が集まり、家じまいの相談を始めるが、「桜の木の下に死体を埋めた」と口走る認知症の時子の言葉が真実だと知っているのは、桜の木についた霊と会話できる立夏だけだった。以降、語り手を次々と変え、時系列もばらばらに、戦前から現代に至る扇谷家の歴史とそれぞれの思いが12の物語としてつづられる。予言、言葉なき者の声を聞く力、千里眼と、それぞれ違う不思議な力を備えた扇谷家の女性たち。その秘密を守るため、結婚相手は近しい一族と決められているが、その宿命に従う者もいれば、逆らう者もいる。世代ごとに価値観も変容し、ある章では未来だったことが、ある章では現在になり、過去にもなる。扇谷家の歴史と共に、思い出を取り出して眺めていくような一冊。