数学する身体(新潮文庫)
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4.5 • 8件の評価
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発行者による作品情報
数学はもっと人間のためにあることはできないのか。最先端の数学に、身体の、心の居場所はあるのか――。身体能力を拡張するものとして出発し、記号と計算の発達とともに抽象化の極北へ向かってきたその歴史を清新な目で見直す著者は、アラン・チューリングと岡潔という二人の巨人へと辿り着く。数学の営みの新たな風景を切りひらく俊英、その煌めくような思考の軌跡。小林秀雄賞受賞作。(解説・鈴木健)
カスタマーレビュー
数学は哲学
小林秀雄賞受賞の一冊。数学を根本から問い直し、哲学し、先人の軌跡を組み合わせながらたどる。難しい。が、ときに”はっ”とさせられる一文あり。
◼️イコールの記号もない時代
1+1=2とは、自明の事実で宇宙の真理であるかのよう。だけど、よくよく考えるとこの記号も人間が作り出したもの。認知されることで共通言語になっている。スマートフォンがなかった時代を想像できないのと同様、数学に用いる記号も方程式の概念もなかった時代の不便に思いをよせる。
◼️情緒の総和
“その人とはその人の過去のことである。その過去のエキスが情緒である。だから情緒の総和がの人である”数学者”岡潔”の言葉。本の後半は、岡潔の思考をたどる。
数学の中心にあるのは”情緒”だという岡。”計算や論理が数学の本体ではない”という逆説的な考え方。と、”情緒を清め、深めることが人間の仕事”という捉え方に共感。
◼️脳がどうはたらいているか
2つの数字をみたときに脳がどう反応するか。”空間”と”時間”と”数”にかかわる情報が、融合しながら処理されていく…だとしたら面白いと筆者。自分の脳が”わかる”という状態にむかって、自動的に反応していく…そんな脳が愛おしい。
◼️素敵な締めかた
“最後に、私の創造意欲を私の知らないところで支えてくれた、見えない風、道端の蟻、土中のミミズや遠く離れた無数の星雲に感謝したい”なんて素敵な本の締めかただろうと思った。
本全体の著者の数学の深め方に愛を感じる。この文章は、心の底から湧き出た言葉なんだろうと思った。
難しいけど、心のどこかで共感できる素敵な本でした。
読了2024/2/8 感想2/25