星落ちて、なお
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発行者による作品情報
女絵師の一生を描ききった直木賞受賞作!
不世出の絵師・河鍋暁斎の娘とよは、暁翠の画号をもつ女絵師。
父亡き後、仲がよいとは言えぬ腹違いの兄・周三郎(暁雲)と共に、
洋画旋風の中、狩野派由来の父の画風を守ろうとする。
明治大正の激動の時代、家庭の生活を担いつつ、
絵師として母として、愚直に己の生を全うした女の一代記。
第165回直木賞受賞作。
解説=東山彰良
※この電子書籍は2021年5月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
歴史小説家、澤田瞳子の第165回直木賞受賞作。2015年の『若冲』で伊藤若冲を描いた澤田は、本作でも江戸末期から明治初期にかけて活躍した天才絵師、河鍋暁斎をテーマに選んでいる。ただし、主人公は暁斎ではなく彼の娘の“とよ”であり、暁斎の死が本作のプロローグとなっている。まさに、偉大な“星”が落ちた後に残された人々の生き様を描いた物語だといえる。幼い頃から父の英才教育を受けて育った、とよ。彼女は河鍋暁翠を名乗り、若くして一門を率いることになる。腹違いの兄との確執もある中で、病弱な妹を抱え、とよは必死に父の残したものを受け継いでいこうとするが…。時代は明治から大正へ、日本の美術界は激動期に差し掛かり、彼女たちが信じてきたものが大きく揺り動かされていくさまはダイナミックで、時代小説の醍醐味に満ちあふれている。何よりも、“画鬼”と称された父の才能は死してなお越えられない壁であり、彼女にとって最大の苦しみの源であるという構図が痛烈だ。そんな父と娘の葛藤の末、彼女がたどり着いた答えに読者は胸を打たれるだろう。