月夜行路
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1.0 • 1件の評価
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- ¥1,700
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発行者による作品情報
専業主婦の涼子は、冷え切った夫との関係や言うことをきかない二人の子どもとの生活に、疲労感と閉塞感を覚えていた。45歳の誕生日を明日に控えた深夜、書籍編集者の夫に女性から一本の電話がかかってきた。「小説家の重原宗助先生からの仕事が入った」と家を出てしまう夫。我慢の限界に達した涼子は、家を飛び出す……。涼子が向かった先は、夫の愛人ホステスが勤めるクラブの入ったビル。1階のBAR「マーキームーン」に入ると、文学好きの美しいママが話しかけてくる。性別は男だというママは、涼子の悩みや素性を鋭い洞察力と推理力で言い当ててしまう。涼子がママに夫の愚痴を話すと、唯一の「良い思い出」である大学時代の彼氏・カズトにもう一度会おうと、旅に出ることになる。
APPLE BOOKSのレビュー
ドロドロした感情を爆発させる『暗黒女子』や『聖母』など、秋吉理香子は後味の悪いミステリー作品を多く発表してきた。『月夜行路』もまた、夫の浮気を確信した専業主婦が、浮気相手を突き止めようと気がはやる序盤に胸騒ぎを覚えるだろう。バレーボールに青春をささげたが活躍することなく、けがで引退してからは専業主婦になった涼子。45歳になった今、家庭には不穏な空気が漂い、大学時代に突然いなくなった恋人のカズトを思い出して心の隙間を埋めていた。そして涼子は偶然知り合ったバーのママと共に、大阪へカズトを捜す旅に出る。文学好きのママにとってこの旅は半分は人捜し、半分は日本文学の聖地巡礼であり、2人の道のりを地図で追うと文学散歩が楽しめるのも魅力。殺人事件が発生し、犯人を捜す謎解きもあり、著者得意のどんでん返しもしっかり準備されている。それらを踏まえた上で、良い意味で裏切られる人生再発見の物語に仕立てた新機軸の作品。日常の閉塞感にうんざりしている人は、涼子の気付きが心に染みるはず。