楽園とは探偵の不在なり
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4.5 • 2件の評価
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- ¥880
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発行者による作品情報
二人以上殺した者は文字どおり地獄に堕とされる世界。探偵の青島を常世島で待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった
APPLE BOOKSのレビュー
天使降臨という特殊な設定に人間の闇を落とし込み、孤島の館を舞台にしたSF的探偵ミステリー。死に取りつかれ周囲を扇動する女子高生を描いた衝撃作『恋に至る病』で注目された斜線堂有紀が、テッド・チャンのヒューゴー賞受賞作『地獄とは神の不在なり』から影響を受けて創作した物語。この世に天使が現れたが、愛らしい容姿ではなく、灰色の肌と骨張った羽根を持ち、頭部は鏡のように平面で無表情。そして、2人以上殺人を犯した人間をその場で焼き尽くし、地獄へと引きずり込む。天使の出現で依頼が激減し、悲惨な事故で愛する部下たちを失った探偵の青岸。ある日、クライアントの常木が所有する常世島に招待される。そこは天使が集まる海の孤島。青岸以外に、天使研究家、悪徳政治家に怪しい実業家と、大富豪に群がるゲストが集結しており、一人、また一人と死体となっていく。天使がいるにもかかわらず、あざ笑うかのように不可能な連続殺人を遂行する犯人。設定は変わり種だが、探偵が解説するトリックと犯行動機は意外にもクラシカルで、クローズドサークルの面白さも存分に味わえる。冒頭の間取り図も見逃さないように。