歌われなかった海賊へ
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- ¥2,000
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発行者による作品情報
1944年、ナチス体制下のドイツ。父を処刑されて居場所をなくした少年ヴェルナーは、体制に抵抗しヒトラー・ユーゲントに戦いを挑むエーデルヴァイス海賊団の少年少女に出会う。やがて市内に建設された線路の先に強制収容所を目撃した、彼らのとった行動とは?──本屋大賞受賞第一作/電子書籍限定でカバーイラスト全体を特別収録
APPLE BOOKSのレビュー
『同志少女よ、敵を撃て』が話題となった逢坂 冬馬の2作目。物語の舞台は1944年、ナチス体制下のドイツ。父を処刑された少年ヴェルナーは、若者らによる反ナチス組織「エーデルヴァイス海賊団」のメンバーと出会う。線路の向こうに強制収容所があることを知った彼らがとった行動とは。抑圧された戦時下の若者の心情と、その中で語られるテーマやメッセージは普遍的だ。今も昔も、人や社会は時としてこうあるべきという戒律のようなものを課して無意識のうちに相手を縛り、その規範に背き続ければ反逆者や落伍者(らくごしゃ)といった一方的な評価を貼りつけ、時に存在そのものを抹消しようと試みる。本作で若者たちがあらがうのはナチスであり無知な大人たちであり、そして現実から目を背けようとする人々だ。イギリスの政治家/政治哲学者として知られるエドマンド・バークはこう言っている。「邪悪が勝つには、何もしない善人さえいればよい」。人種や宗教、格差や分断を乗り越えるために我々がなすべきことは何か。投げられた問いに心が揺さぶられる、エモーショナルでみずみずしい青春小説であり、戦争小説であり、スリルも満載の冒険小説だ。